静岡・伊豆山温泉ガイド|走り湯と源頼朝・北条政子ゆかりの社、江戸番付『権現の湯』

相模湾を見下ろす急斜面に、海へ向かって湯が「走り落ちる」源泉がある ── 静岡県熱海市の伊豆山温泉(いずさんおんせん)。熱海の市街地から少し北、海岸線に7軒ほどの旅館・ホテルが張りつくように建ち、山側には企業や健康保険組合の保養所が点在します。江戸時代の温泉番付『諸国温泉功能鑑』に「豆州 権現の湯」前頭(3段目)として登載された、由緒ある古湯です。

この地の主役は、日本でも珍しい横穴式の源泉「走り湯(はしりゆ)」。約1300年前の養老年間に見つかったと伝わり、洞窟の奥から今も高温の湯が湧き続けています。さらに、源頼朝と北条政子が源氏再興を祈願した伊豆山神社赤白二龍の縁結び伝説役小角(えんのおづの)の龍信仰など、温泉と信仰・歴史が分かちがたく結びついているのが伊豆山の最大の個性です。にぎやかな歓楽温泉街を求めるのではなく、「湯と信仰の原点」に触れる旅を求める人に向く温泉地です。

本記事は、がやが熱海市観光協会公式・ゆこゆこ・各種公開情報などをもとに、「走り湯という横穴式源泉」「伊豆山神社と頼朝・政子ゆかりの歴史」「江戸番付の格付け」「開湯伝承と龍信仰」の4軸で伊豆山温泉の魅力を紐解いた情報整理型ガイドです。宿泊実績に基づく体験記ではなく、公式情報を丁寧に交差確認した机上ガイドである点を最初にお断りしておきます。

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執筆:がや

出張と趣味で全国の温泉宿に通算200泊以上。江戸期温泉番付の現物(弘化2年改訂版『諸國温泉鑑』)を所有し、番付に載る温泉地を一つずつ訪ねて歴史的視点で記事にしています。江戸の温泉番付『諸国温泉鑑』を今の温泉名にして地図に表記した記事もあわせてご覧ください。

📌 この記事で分かること

  • 伊豆山温泉がどんな湯か(相模湾を望む斜面・海岸線7軒の宿と塩化物泉主体の泉質・効能)
  • 横穴式源泉「走り湯」の正体と、見学できる洞窟と入浴できる共同湯の違い
  • 伊豆山神社・源頼朝と北条政子・赤白二龍伝説など、温泉と結びついた歴史
  • 江戸番付に載る格付けと、「日本三大古泉」という呼称をどう受け止めるか
  • 熱海駅からのアクセスと、熱海観光と組み合わせる旅程・泊まれる宿の探し方

📑 目次

  1. 伊豆山温泉の基本情報|相模湾を望む斜面・海沿いの宿と信仰の湯
  2. アクセス・施設情報
  3. 旅程モデルと周辺観光
  4. 四季の楽しみ方|伊豆山温泉に行くベストシーズン
  5. ふるさと納税で熱海市を応援する
  6. 泉質と効能|塩化物泉主体の伊豆山の湯
  7. 江戸期番付『諸国温泉功能鑑』の格付け
  8. 走り湯|横穴式源泉と「日本三大古泉」の呼称
  9. 伊豆山神社と赤白二龍伝説
  10. 源頼朝・北条政子ゆかりの地
  11. 開湯の歴史と龍信仰|役小角から江戸番付まで
  12. 宿泊施設|海沿いの旅館・ホテル
  13. 周辺観光と熱海温泉との関係
  14. グルメ・名物|熱海の海の幸と甘味
  15. 伊豆山温泉のよくある質問(FAQ・10問)
  16. まとめ|伊豆山温泉を訪れるべき理由

相模湾を望む歴史ある古湯 伊豆山温泉|江戸番付「豆州 権現の湯」前頭3段目・走り湯と伊豆山神社

伊豆山温泉の基本情報|相模湾を望む斜面・海沿いの宿と信仰の湯

伊豆山神社の参道石段(走り湯から本殿まで837段)

走り湯から伊豆山神社本殿へ続く参道石段。全837段(出典:Wikimedia Commons / Naokijp / CC BY-SA 4.0)

伊豆山温泉は、静岡県熱海市伊豆山に位置し、相模湾を見下ろす急斜面に開ける海沿いの温泉地です。熱海温泉の中心市街地からは北東へ少し離れ、海岸線に7軒ほどの旅館・ホテルが建ち並び、山側の高台には企業・健康保険組合の保養所が数多く点在しています。かつての共同浴場文化を伝える公衆浴場は、現在は「走り湯浜浴場」など限られた施設が残るのみです。

伊豆山の最大の特徴は、温泉と信仰が分かちがたく結びついていることです。海へ湯が走り落ちる横穴式源泉「走り湯」、その湯を神湯としてまつった伊豆山神社、源頼朝と北条政子の物語 ── これらが一体となって、単なる湯どころではない独特の歴史空間を形づくっています。大型歓楽街のにぎわいを楽しむ温泉地というより、湯と歴史・信仰をたどる静かな滞在に向く立地です。飲食や買い物は、隣接する熱海市街地(車・バスですぐ)で調達できます。

項目 内容
所在地 静岡県熱海市伊豆山
立地 相模湾を望む急斜面・熱海温泉の北東に隣接
宿の規模 海岸線に旅館・ホテル約7軒+山側に企業・健保の保養所が多数
共同浴場 現在は「走り湯浜浴場」など限られた施設
象徴 横穴式源泉「走り湯」・伊豆山神社
泉質 塩化物泉が主体(硫酸塩・塩化物泉が約65%)・単純温泉も
源泉温度 64.7〜81.3℃(各源泉)
江戸期番付 『諸国温泉功能鑑』に「豆州 権現の湯」前頭(3段目)で登載

伊豆山温泉は、「熱海の華やかな歓楽温泉街」とは一線を画す、信仰と歴史に彩られた海辺の湯として位置づけられます。走り湯・伊豆山神社・頼朝と政子の物語という、他の温泉地にはない歴史資源を歩いて巡れることが、この地ならではの価値です。

アクセス・施設情報

住所・地図・連絡先

住所 静岡県熱海市伊豆山
電話 熱海市観光協会 0557-85-2222
最寄駅 JR「熱海駅」(伊豆山までバス約5分+徒歩)
最寄IC 厚木IC(伊豆山まで車約40分)
東京から 東海道新幹線で熱海駅まで約40〜50分+バス約5分
バス 熱海駅から東海バス(伊豆山・湯河原方面)約5分「逢初橋(あいぞめばし)」下車→徒歩5〜10分
送迎 一部宿で対応(要事前予約)
駐車場 各宿に併設

アクセス経路図

東京・熱海駅から伊豆山温泉へのアクセス経路図電車+バス+徒歩(東京・熱海から)東京駅🚄 新幹線こだま等約40〜50分🚌 東海バス伊豆山・湯河原方面約5分🚶 徒歩約5〜10分合計:東京〜伊豆山温泉まで約1時間強/熱海駅からは約15分車利用は厚木ICから約40分

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アクセスの補足と注意点

  • 熱海駅からの近さ:伊豆山は熱海駅からバス約5分+徒歩で到着でき、東京から新幹線+バスで1時間強という好アクセスが魅力です。
  • 坂の多い地形:相模湾を望む急斜面に宿が点在するため、徒歩移動は上り下りが多く、大きな荷物がある場合は宿の送迎(要予約)やタクシー利用が快適です。
  • 熱海温泉との一体利用:伊豆山と熱海市街は近接しているため、熱海の花火大会・商店街・美術館などと組み合わせた旅程が組みやすい立地です。
  • 走り湯へのアクセス:走り湯(洞窟・浜浴場)は海岸近くに位置し、伊豆山神社の参道石段(走り湯から本殿まで837段)と合わせて散策できます。

東京からのモデルルート

  1. 東京駅 → 東海道新幹線「こだま」等で熱海駅(約40〜50分)
  2. 熱海駅 → 東海バス(伊豆山・湯河原方面)で「逢初橋」下車(約5分)
  3. 逢初橋 → 徒歩で伊豆山温泉の各宿・走り湯・伊豆山神社(約5〜10分)

車利用の場合は厚木ICから約40分です。伊豆山を拠点にすれば、熱海市街の観光・グルメと、伊豆山の走り湯・伊豆山神社の歴史散策を組み合わせた1泊2日プランが無理なく組めます。

旅程モデルと周辺観光

源頼朝・北条政子ゆかりの伊豆山神社

源頼朝が源氏再興を祈願し北条政子と結ばれたと伝わる伊豆山神社(出典:Wikimedia Commons / 663highland / CC BY-SA 4.0)

1泊2日モデルプラン

日次 時間帯 プラン
1日目 午前 東京→熱海(新幹線約40〜50分)、熱海市街で昼食・散策
午後 走り湯(洞窟)見学、伊豆山神社参拝(走り湯から参道石段837段を上る)
夕方 伊豆山温泉の宿にチェックイン、相模湾を望む湯に浸かる
2日目 午前 頼朝・政子ゆかりの腰掛石・逢初橋を巡る、海辺の散策
熱海市街で海の幸ランチ、熱海銀座商店街で土産選び
午後 熱海→東京(新幹線約40〜50分)

周辺の主要観光スポット

  • 走り湯(横穴式源泉の洞窟・見学可)
  • 伊豆山神社(走湯権現・縁結び・頼朝と政子ゆかり)
  • 頼朝政子腰掛石・逢初橋(頼朝と政子の物語の舞台)
  • 熱海サンビーチ・親水公園(海辺の散策路)
  • 熱海銀座商店街(グルメ・土産)
  • 熱海海上花火大会(年間を通じて複数回開催)
  • MOA美術館(熱海市街の高台・国宝級コレクション)

四季の楽しみ方|伊豆山温泉に行くベストシーズン

伊豆山神社の鳥居

伊豆山神社の鳥居。四季を通じ縁結びの参拝者が訪れる(出典:Wikimedia Commons / しなず山 藤 / CC BY-SA 4.0)

季節 魅力 注意点
春(3〜5月) 温暖な気候と穏やかな相模湾・熱海の桜と組み合わせた散策 花見シーズンの週末は混雑
夏(7〜8月) 海辺のリゾート気分・熱海海上花火大会を宿や海辺から観賞 花火開催日は宿が早期満室
秋(9〜11月) 過ごしやすい気候で歴史散策に最適・海の幸が充実 台風シーズンは天候確認を
冬(12〜2月) 温暖で雪はまれ・澄んだ空気の相模湾と高温源泉が恋しい季節・冬の花火 海風が冷たいので防寒を

伊豆山温泉は温暖な相模湾岸に位置し、通年で訪れやすいのが強みです。東京から新幹線+バスで1時間強という近さもあり、金曜夜出発・日曜帰宅の1泊2日はもちろん、週末の弾丸旅でも十分楽しめる立地です。熱海の花火大会(春・夏・秋・冬に複数回開催)に合わせて日程を組むのも人気です。

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泉質と効能|塩化物泉主体の伊豆山の湯

伊豆山温泉の泉質は、塩化物泉が主体で、硫酸塩・塩化物泉が全体の約65%を占め、一部に単純温泉もあります。塩分を含む塩化物泉は「熱の湯」とも呼ばれ、湯冷めしにくく体を芯から温めるのが特徴です。海に近い立地ながら、複数の高温源泉に恵まれた温泉地です。

定量データ

項目 数値・内容
泉質 塩化物泉が主体(硫酸塩・塩化物泉が約65%)・単純温泉も
源泉温度 64.7〜81.3℃(各源泉)
湧出量 毎分28.5〜80.0L(各源泉)
主な効能(一般的適応) 神経痛・冷え性・皮膚の乾燥・婦人科系の不調 など
走り湯(洞窟内) 洞窟内約70℃・毎分約170L湧出

塩化物泉は入浴後も保温効果が続くため、冷え性の方や湯冷めしやすい方に向くとされます。効能は温泉一般の適応症の範囲であり、医学的効果を保証するものではありませんが、古くから湯治の湯として親しまれてきた背景には、この温まりやすい塩化物泉の特性があると考えられます。各宿の浴場は内湯・露天を備えるものが多く、相模湾を望む湯船から海と空を眺める入浴が伊豆山ならではの体験です。日帰り入浴の可否や時間帯は宿により異なるため、訪問前に各宿へ直接お問い合わせください。

江戸期番付『諸国温泉功能鑑』の格付け

伊豆山温泉は、江戸時代後期に作成された温泉番付『諸国温泉功能鑑』に、「豆州 権現の湯」前頭(3段目)として登載された名湯です。「豆州」は伊豆国、「権現」は伊豆山権現(伊豆山神社の旧称)を指し、温泉名そのものに信仰が刻まれているのが伊豆山の特徴です。

項目 内容
番付名 『諸国温泉功能鑑』(江戸後期)
番付上の名称 豆州 権現の湯(=伊豆山温泉)
格付け 前頭(3段目)
出典 『諸国温泉功能鑑』/『諸國温泉鑑』弘化2年(1845年)改訂版(当サイト所蔵版)
同じ豆州の湯 豆州 湯河原の湯(前頭1段目)・小名の湯・朱善寺の湯(修善寺・前頭3段目)

同じ伊豆国(豆州)からは湯河原修善寺なども番付に名を連ねており、伊豆は江戸期から名湯が集まる地域として認識されていました。伊豆山が「権現の湯」の名で登載された背景には、一般の湯治客が気軽に入る温泉というより、伊豆山権現への参詣とセットで湯を使う「信仰の湯」という位置づけがありました(詳しくは後半の歴史の項で触れます)。

走り湯|横穴式源泉と「日本三大古泉」の呼称

横穴式源泉「走り湯」の湯口

横穴式源泉「走り湯」。洞窟の奥から高温の湯が湧き出す(出典:Wikimedia Commons / Batholith / パブリックドメイン)

伊豆山温泉の象徴が、横穴式源泉「走り湯(はしりゆ)」です。山の中腹から湧いた湯が海へ向かって「走り落ちる」ように流れ出すことから、この名がつきました。上から湯が湧き出る温泉が多いなか、洞窟の横から湯が噴き出す「横穴式」は日本でも珍しい形態です。

走り湯の基本データ

項目 内容
種類 横穴式源泉(日本でも珍しい形態)
発見伝承 約1300年前・養老年間
洞窟 奥行き約5m・洞窟内約70℃・毎分約170L湧出
名称由来 山中の湯が海へ走り落ちる様子から
信仰 明治以前は伊豆山神社の神湯・源実朝が和歌三首を詠んだと伝わる

なお、走り湯の周辺にはかつて毎分約900Lを自噴した「伊豆山1号泉」もありましたが、現在は給湯を休止しています。混同されやすいのですが、見学できる走り湯の洞窟からの湧出(毎分約170L)は現在も続いており、給湯を休止した伊豆山1号泉とは別の源泉です。「走り湯は枯れてしまったのでは」と誤解されることがありますが、洞窟の源泉は今も湧き続けています。

「見学する洞窟」と「入浴する共同湯」は別施設

ここで旅行者が最も混同しやすい点を整理します。「走り湯」と呼ばれる場所には、見学用の洞窟入浴できる共同湯2つがあり、別の施設です。

施設 内容 利用
走り湯(洞窟) 源泉が湧く横穴を見学できる。湯気に包まれた洞窟の中を覗ける 見学施設(入浴はできません)/目安 9:00〜17:00
走り湯浜浴場 走り湯の源泉を引いた共同浴場。実際に湯に浸かれる 大人350円・小人100円/14:30〜21:30/木曜定休(変更の可能性あり)

「走り湯を見に行く」=洞窟の見学「走り湯に入る」=走り湯浜浴場での入浴、と使い分けると迷いません。営業時間・定休日・料金は変更されることがあるため、訪問前に熱海市観光協会(0557-85-2222)または現地の掲示で最新情報をご確認ください。

「日本三大古泉」という呼称について

伊豆山温泉(走り湯)は、しばしば「日本三大古泉」と紹介されます。ただし、この呼称には注意が必要です。

  • 「日本三大古泉」は、熱海市観光協会が走り湯を指して用いる呼称です。走り湯の歴史の古さ・横穴式源泉としての希少性を強調する表現として使われています。
  • 一方、一般に「日本三古湯(三古泉)」として知られるのは、道後温泉(愛媛)・有馬温泉(兵庫)・白浜温泉(和歌山)を挙げる説(『日本書紀』『万葉集』などに基づく説)が広く知られています。白浜の代わりにいわき湯本温泉を挙げる別説もあります。

つまり、「日本三大古泉」(熱海市観光協会の呼称)と、一般的な「日本三古湯」は指すものが異なります。伊豆山を「日本三古湯の一つ」と断定するのは正確ではなく、「熱海市観光協会が日本三大古泉と称する、歴史ある横穴式源泉」と理解するのが適切です。呼称の由来を知ったうえで訪ねると、走り湯の歴史的価値がより立体的に見えてきます。

伊豆山神社と赤白二龍伝説

走り湯の湯を「神湯」としてまつってきたのが、伊豆山神社(いずさんじんじゃ)です。走り湯から本殿まで参道の石段は837段。かつては「走湯(そうとう)大権現」「伊豆山権現」「伊豆大権現」と呼ばれ、伊豆一帯の信仰の中心でした。江戸番付で伊豆山が「権現の湯」と記されたのも、この神社の存在ゆえです。

項目 内容
創建伝承 社伝によれば孝昭天皇の時代(神話的年代)。当初は日金山(ひがねさん)山頂にまつられ、836年(承和3年)に僧・賢安(けんあん)が現在地へ遷座したと伝わる
権現号 推古天皇3年(594年)「走湯大権現」の名号/のちに伊豆山権現・伊豆大権現
参道石段 走り湯から本殿まで837段
祭神 火牟須比命・天之忍穂耳命・拷幡千千姫尊・瓊瓊杵尊の4柱
明治の変遷 別当・般若院(高野山真言宗)から神仏分離を経て「伊豆山神社」に
ゆかりの人物 徳川家康ほか歴代の大名/1914年に皇太子(のちの昭和天皇)が黒松を手植え

創建伝承の「孝昭天皇の時代」はいわゆる神話的年代であり、史実として年代を特定できるものではありません。ここでは「社伝によれば」とお断りしたうえで紹介しています。とはいえ、594年の権現号、836年の遷座伝承といった記録からも、伊豆山が古代から連綿と信仰を集めてきた聖地であることは確かです。

赤白二龍伝説と縁結び

伊豆山神社が縁結びの社として知られるのは、赤白二龍(せきびゃくにりゅう)伝説によります。赤龍は母、白龍は父を表し、二龍が地下で結び合うことで温泉を生み出す ── という信仰で、夫婦和合・縁結びの象徴とされてきました。走り湯=龍の吐く湯という龍神信仰と結びつき、伊豆山は古くから恋愛・良縁を願う人々が参拝してきました。実際、源頼朝と北条政子が結ばれた地とされることも、縁結びの信仰を後押ししています。

源頼朝・北条政子ゆかりの地

伊豆山を語るうえで欠かせないのが、源頼朝(みなもとのよりとも)と北条政子(ほうじょうまさこ)の物語です。伊豆に流されていた頼朝が、源氏再興を祈願したのが伊豆山権現でした。頼朝と政子はこの地で愛を育んだと伝わり、伊豆山は鎌倉幕府の「聖地」として篤く保護されました。

エピソード 内容
源氏再興の祈願 配流中の頼朝が伊豆山権現に源氏再興を祈願。幕府開創後は社領を多く寄進した
頼朝政子腰掛石 頼朝と政子が腰掛けて語らったと伝わる石が境内に残る
逢初橋(あいぞめばし) 頼朝と政子ゆかりの橋。名は「初めて逢う」に由来し、政子が宴席を抜け出して頼朝と会った・政子が頼朝を出迎えた等の伝承が伝わる(バス停名にも残る)
二所詣(にしょもうで) 歴代将軍が伊豆山神社と箱根神社を参拝する行事。両社は東国を守る神として重んじられた

頼朝と政子の物語は、身分違いの恋を乗り越えて結ばれ、やがて鎌倉幕府を開くに至るドラマとして語り継がれてきました。その原点が伊豆山にあることが、この地を「良縁の聖地」たらしめています。境内の腰掛石やバス停「逢初橋」の名に、800年以上前の物語が今も息づいています。

開湯の歴史と龍信仰|役小角から江戸番付まで

伊豆山温泉・走り湯の歴史は、修験道龍神信仰と深く結びついています。ここでは開湯にまつわる伝承から、江戸期に湯治場として知られるまでの歩みを整理します。

役小角と五色の湯煙

伊豆山の開湯伝承には、修験道の祖・役小角(えんのおづの)が登場します。699年に伊豆大島へ流罪となった役小角が、走り湯から立ちのぼる五色の湯煙を見て霊地と感得し、草庵を結んで修行したと伝わります。伊豆山が山岳信仰・修験の聖地として発展した原点とされる伝承です。

龍信仰 ── 伊豆山そのものが巨大な龍

伊豆山には、この地全体を一匹の巨大な龍に見立てる独特の信仰があります。

  • 伊豆山=龍の目
  • 走り湯=龍の口(口から湯を吐き出す)
  • 龍の身体は富士山まで通じているとされる

走り湯から湯が噴き出す様子を「龍が湯を吐く」と捉えるこの信仰は、前述の赤白二龍伝説(縁結び)とも響き合い、伊豆山の温泉・神社・地形を一つの神話世界に統合しています。温泉を「龍の恵み」として敬う姿勢が、伊豆山の湯を「神湯」たらしめてきました。

江戸番付に登載された背景と、その後の衰退

江戸期、伊豆山が『諸国温泉功能鑑』に「権現の湯」として登載された背景には、一般の湯治客が直接入浴するのは難しく、遠方の「講(こう)」が伊豆山権現への参詣に合わせて旅籠で湯を使うという信仰と結びついた温泉利用がありました。「無垢霊場…六根清浄」と唱えながら湯に身を清める、参詣と一体の温泉文化だったのです。

一方で、伊豆山は天正18年(1590年)の豊臣秀吉による小田原征伐で大きな打撃を受け荒廃し、江戸期には隣接する熱海温泉に繁栄の座を譲ることになりました。今日、熱海が全国有数の温泉観光地として知られる一方で、伊豆山が「信仰と歴史の湯」として静かなたたずまいを保っているのは、こうした歴史的経緯によるものです。

宿泊施設|海沿いの旅館・ホテル

伊豆山温泉の宿泊施設は、相模湾を望む海岸線に建つ旅館・ホテル約7軒が中心です。眺望を生かした客室露天風呂や海一望の大浴場を備える宿が多く、熱海の華やかさから少し離れて静かに過ごしたい滞在に向きます。山側には企業・健康保険組合の保養所も多く点在しています。

伊豆山温泉には独立した旅館組合による一元的な予約窓口はないため、宿泊予約は各宿へ直接、または楽天トラベル・じゃらんnet等のOTA(オンライン予約サイト)を利用するのが一般的です。眺望・客室露天の有無・送迎対応などは宿ごとに異なるため、条件を絞って比較するのがおすすめです。

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周辺観光と熱海温泉との関係

伊豆山温泉は熱海温泉と隣接しており、両者の境界は地元でも曖昧です。一般には東海道本線の逢初山隧道(あいぞめやまずいどう)東京側坑口あたりを境とする見方があります。行政区分としてはいずれも熱海市に属し、観光では「熱海・伊豆山」を一体のエリアとして巡るのが実際的です。

伊豆山を拠点にすると、徒歩圏の走り湯・伊豆山神社・頼朝政子ゆかりの史跡に加え、バス・車ですぐの熱海市街の観光を組み合わせられます。

  • 熱海サンビーチ・親水公園(ライトアップされた海辺の遊歩道)
  • 熱海銀座商店街・平和通り商店街(食べ歩き・土産)
  • 來宮神社(大楠のパワースポット)
  • MOA美術館(相模湾を望む高台の美術館)
  • 熱海海上花火大会(春夏秋冬に複数回開催)

「伊豆山で静かに湯と歴史を味わい、熱海市街でにぎわいとグルメを楽しむ」── 静と動を1泊2日で両取りできるのが、このエリアの魅力です。

グルメ・名物|熱海の海の幸と甘味

伊豆山温泉には大きな商店街はありませんが、隣接する熱海市街まで足を延ばせば、相模湾の幸を中心とした豊かな食文化が待っています。

海の幸

相模湾で獲れる金目鯛・アジ・イカなどの干物は熱海の代表的な名物です。朝食に焼きたての干物を出す宿も多く、海鮮丼や地魚の握りを熱海市街の食事処で味わうのも旅の楽しみです。

甘味・土産

  • 温泉まんじゅう:熱海の定番土産
  • いろいろな柑橘(みかん・橙など):温暖な伊豆・熱海の特産
  • 熱海プリン・干物・ひもの茶漬け:食べ歩き・土産に人気

伊豆山の宿でゆっくり夕食を楽しんだ翌日、熱海銀座商店街で食べ歩きと土産選びを楽しむ ── そんな組み合わせが定番です。

伊豆山温泉のよくある質問(FAQ・10問)

Q1. 伊豆山温泉はどこにありますか?

A. 静岡県熱海市伊豆山にあります。熱海温泉の北東に隣接し、相模湾を望む急斜面に旅館・ホテルが約7軒建ち並ぶ海沿いの温泉地です。

Q2. 熱海駅からどうやって行きますか?

A. 熱海駅から東海バス(伊豆山・湯河原方面)で約5分、「逢初橋」下車後、徒歩5〜10分です。東京からは新幹線で熱海駅まで約40〜50分、車なら厚木ICから約40分です。

Q3. 「走り湯」とは何ですか?

A. 山中の湯が海へ走り落ちる横穴式の源泉で、日本でも珍しい形態です。約1300年前の養老年間に見つかったと伝わり、洞窟内は約70℃・毎分約170L湧出しています。伊豆山温泉の象徴的存在です。

Q4. 走り湯に入浴できますか?

A. 見学用の「走り湯(洞窟)」は入浴できません(湧出する源泉を見学する施設です)。入浴したい場合は、走り湯の源泉を引いた共同浴場「走り湯浜浴場」(大人350円・小人100円/14:30〜21:30/木曜定休)を利用します。営業情報は変更されることがあるため、事前にご確認ください。

Q5. 「日本三大古泉」というのは本当ですか?

A. 「日本三大古泉」は熱海市観光協会が走り湯を指して用いる呼称です。一般に知られる「日本三古湯」は道後・有馬・白浜(別説でいわき湯本)を挙げる説が広く、両者は指すものが異なります。伊豆山を「日本三古湯の一つ」と断定するのは正確ではなく、「熱海市観光協会が日本三大古泉と称する歴史ある古湯」と理解するのが適切です。

Q6. 泉質は何ですか?

A. 塩化物泉が主体(硫酸塩・塩化物泉が約65%)で、一部に単純温泉もあります。源泉温度は64.7〜81.3℃と高温で、湯冷めしにくい「熱の湯」系の泉質です。

Q7. 伊豆山神社は何がゆかりですか?

A. 走り湯を神湯としてまつる古社で、走り湯から本殿まで参道石段が837段あります。源頼朝が源氏再興を祈願し、北条政子と結ばれた地とされ、赤白二龍伝説による縁結びの社として知られます。

Q8. 源頼朝・北条政子とどう関係しますか?

A. 伊豆に配流中の頼朝が伊豆山権現に源氏再興を祈願し、政子と愛を育んだ地と伝わります。境内には「頼朝政子腰掛石」が残り、政子が頼朝を出迎えたとされる「逢初橋」はバス停名にもなっています。

Q9. 江戸時代の温泉番付に載っていますか?

A. はい。『諸国温泉功能鑑』に「豆州 権現の湯」前頭(3段目)として登載されています。同じ伊豆国では湯河原・修善寺なども番付に名を連ねています。

Q10. 熱海観光と組み合わせられますか?

A. はい。伊豆山と熱海市街は隣接しており、境界も曖昧なほど近いため、伊豆山で走り湯・伊豆山神社・頼朝政子の史跡を巡り、熱海市街で海の幸・商店街・花火を楽しむ1泊2日が定番です。

まとめ|伊豆山温泉を訪れるべき理由

伊豆山温泉は、江戸期『諸国温泉功能鑑』に「豆州 権現の湯」前頭(3段目)として登載された名湯であり、相模湾を望む急斜面に旅館・ホテル約7軒が建つ、静かな海辺の温泉地です。その最大の個性は、温泉と信仰・歴史が分かちがたく結びついていることにあります。

山中の湯が海へ走り落ちる横穴式源泉「走り湯」、その湯を神湯としてまつる伊豆山神社源頼朝と北条政子が源氏再興を祈願し結ばれた物語役小角の五色の湯煙赤白二龍の縁結び伝説 ── これらが一体となった歴史空間は、他の温泉地では味わえません。塩化物泉主体の高温泉(64.7〜81.3℃)で体を芯から温め、837段の参道や海辺の史跡を歩けば、湯と信仰の原点に触れる旅になります。

「熱海の華やかさとは少し違う、静かな信仰と歴史の湯を訪ねたい」頼朝と政子ゆかりの地で良縁を願いたい」「江戸番付に載る古湯を一つずつ巡りたい」── そんな旅人に、伊豆山温泉は強くおすすめできる選択肢です。東京から新幹線+バスで1時間強という近さも、この歴史ある湯を身近なものにしてくれます。

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横穴式源泉「走り湯」と頼朝・政子の物語が息づく海辺の湯。江戸番付に載る名湯を歴史とともに体感してください。

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【PR表記】本記事は楽天トラベル・じゃらんnet・楽天ふるさと納税のアフィリエイト広告を含みます。記事内容は一次情報および公式情報に基づき、がやが独自に編集しています。

出典・確認源と裏取り強度

本記事のファクトは可能な限り公式情報源で裏取りしていますが、一部の主張は単一情報源に依拠しています。読者の判断材料として、確認源と裏取り強度を以下に明示します。

主張 確認源 裏取り強度
走り湯=横穴式源泉・洞窟内約70℃・毎分約170L 熱海市観光協会公式 公式情報源(要現地掲示確認)
「日本三大古泉」の呼称 熱海市観光協会公式(呼称であることを明示・一般の三古湯と併記) 呼称の出所を明示(両説を明記)
走り湯浜浴場 大人350円・14:30〜21:30・木曜定休 ゆこゆこ等公開情報 単一情報源(要公式・現地再確認)
泉質・源泉温度64.7〜81.3℃・湧出量 Wikipedia「伊豆山温泉」/ゆこゆこ 単一情報源(要各源泉分析書確認)
伊豆山神社 創建(社伝孝昭天皇)・836年遷座・837段 Wikipedia「伊豆山神社」(社伝=神話年代と明示) 単一情報源(伝承・要神社公式確認)
赤白二龍伝説・縁結び Wikipedia「伊豆山神社」 単一情報源(伝承)
源頼朝・北条政子ゆかり(祈願・腰掛石・二所詣) Wikipedia「伊豆山神社」「伊豆山温泉」 単一情報源(伝承・要原典確認)
役小角699年伊豆大島流罪・龍信仰・天正18年衰退 Wikipedia「伊豆山温泉」 単一情報源(伝承・要原典確認)
『諸国温泉功能鑑』「豆州 権現の湯」前頭(3段目) 当サイト所蔵『諸國温泉鑑』弘化2年改訂版/マザー番付記事p169 所蔵版本+自サイトp169で照合

各主張は「公式情報・伝承の引用」であって、がやによる現地検証・原典確認は限定的です。特に走り湯浜浴場の営業情報(料金・時間・定休)は変更されることがあるため、訪問前に必ず熱海市観光協会または現地掲示で最新情報をご確認ください。学術的正確性が求められる場合は、神社公式・自治体史・国立国会図書館等の原典で再確認をお願いします。

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