仙石原温泉ガイド|1736年の引湯から生まれた高原リゾートとすすき草原

すすきの見頃は9月下旬から11月上旬。秋になると、台ヶ岳の山裾いちめんが金色に染まります。約18ヘクタールに広がるススキの原を、全長700mの遊歩道がまっすぐに貫いている ── 仙石原温泉(せんごくはらおんせん)は、箱根の北西、標高650〜700mほどの高原に開けた温泉地です。

ただ、この温泉地にはひとつだけ、箱根のほかの温泉地と決定的に違うところがあります。仙石原には、湯本にも塔之沢にも底倉にもある「足元から湧く湯」がありません。仙石原の温泉は、大涌谷から湯を「引いてくる」ことで始まった温泉地なのです。江戸の温泉番付にその名がないのも、箱根七湯に数えられないのも、そこに理由があります。

この記事では、引湯から生まれた温泉地という仙石原の成り立ちを軸に、泉質のしくみ、すすき草原と天然記念物の正確な話、美術館めぐり、日帰り入浴の一覧までをまとめます。がやは2026年8月に仙石原の宿に実際に泊まってきましたので、現地で確かめた温泉分析書の中身もあわせてお伝えします。温泉街の賑わいより静けさと美術館のある大人の旅を求める方、ひとり旅の方に向く温泉地です。箱根全体の温泉地については「箱根十七湯ガイド」もあわせてご覧ください。

【PR】本記事は楽天トラベル・じゃらんnetのアフィリエイト広告を含みます。

仙石原温泉ガイド|1736年、大涌谷からの引湯で始まった仙石原温泉(白濁湯と透明湯・すすき草原・美術館めぐり)
仙石原温泉は1736年、大涌谷から湯を引いたことで始まりました。白濁湯と透明湯の2系統、すすき草原、美術館めぐりが揃う箱根の高原リゾートです。(記事のイメージバナー)

執筆:がや/2026年8月に仙石原の宿へ実際に宿泊し、館内掲示の温泉分析書を実見しています

出張と趣味で全国の温泉宿に通算200泊以上。江戸期温泉番付の現物(弘化2年改訂版『諸國温泉鑑』)を所有し、番付に載る温泉地を一つずつ訪ねて歴史的視点で記事にしています。江戸の温泉番付『諸国温泉鑑』を今の温泉名にして地図に表記した記事もあわせてご覧ください。

📌 この記事で分かること

  • 仙石原温泉が「引湯」から生まれた成り立ち(1736年の4軒から昭和5年の供給会社へ)
  • 白濁湯と透明湯という2系統の泉質のしくみ(集中管理で各宿へ供給)
  • がやが現地で確かめた温泉分析書の中身(pH2.1とpH9.18の2源泉)
  • すすき草原の見頃・遊歩道と、国の天然記念物の「正確な」指定内容
  • 美術館めぐり・日帰り入浴13施設の料金と時間(組合公式)

📑 目次

  1. 仙石原温泉とは ── 高原に開けた32軒の温泉地
  2. なぜ仙石原に自噴の湯がないのか ── 1736年、引湯から始まった温泉地
  3. 仙石原すすき草原 ── 18ヘクタールと700mの遊歩道
  4. 泉質のしくみ ── 白濁湯と透明湯、2系統を集中管理
  5. 現地で確かめた温泉分析書 ── pH2.1とpH9.18が同じ宿にある
  6. 美術館めぐり ── 高原リゾートならではの文化施設
  7. 日帰り入浴できる13施設 ── 料金と時間の一覧
  8. 宿の選び方 ── 32軒をどう絞るか
  9. アクセスと基本情報 ── バスが主役の温泉地
  10. 四季の楽しみ方
  11. 国の天然記念物は「ススキ」ではない ── 正確な指定内容
  12. 1泊2日のモデルコース
  13. よくある質問
  14. まとめ ── 「新しい温泉地」だからこその面白さ

仙石原温泉とは ── 高原に開けた32軒の温泉地

仙石原温泉は、神奈川県足柄下郡箱根町の北西部、箱根外輪山に囲まれた高原に開けた温泉地です。標高は箱根町観光協会の案内で650m〜700m前後とされ、箱根の温泉地のなかでは高いところに位置します。箱根仙石原温泉旅館ホテル組合には32軒の宿が加盟しています(2026年8月時点・組合公式サイトの掲載を実際に数えました)。

地形の特徴は、なんといっても広い平坦な草原であることです。湯本や塔之沢のように川沿いの狭い谷筋に宿が密集するのではなく、台ヶ岳の裾野に広がる開けた土地に、宿や美術館がゆったりと点在しています。「温泉街」と呼べるような飲食店の並ぶ通りはありません。夜に浴衣で食べ歩きをするような楽しみ方には向かない代わりに、静けさと開放感があります。

宿の顔ぶれも独特です。星野リゾート 界 仙石原やTHE HIRAMATSUのような高級宿から、1名から泊まれる手頃な宿、素泊まりに対応する宿まで幅が広いのが特徴で、老舗の湯治宿が中心の温泉地とはまったく性格が違います。これは仙石原が、後で述べるように近代のリゾートとして開発されたことと深く関係しています。

なぜ仙石原に自噴の湯がないのか ── 1736年、引湯から始まった温泉地

箱根町観光協会の公式サイトは、仙石原温泉についてこう記しています。

温泉利用は元文元年(1736)、大涌谷の引湯に始まります

出典:箱根町観光協会「仙石原温泉」

ここが仙石原を理解する鍵です。仙石原の温泉は、この土地から湧いたものではありません。山ひとつ隔てた大涌谷から湯を引いてきて、はじめて温泉地として成立しました。

箱根には古くから「箱根七湯」と呼ばれる湯治場がありました。湯本・塔之沢・堂ヶ島・宮ノ下・底倉・木賀・芦之湯の7つで、いずれも早川や須雲川の谷筋に自然に湧いた湯です。江戸時代の温泉番付『諸国温泉功能鑑』にも、これらの多くが「相州湯元の湯」「相州木賀の湯」といった名前で登載されています。

しかし仙石原は、この七湯にも番付にも入っていません。がやが所有する江戸期の番付現物を確認しても、仙石原の名は出てきません。江戸時代の感覚では、仙石原はまだ「温泉地」として数えられる存在ではなかったのです。

転機は近代です。箱根町観光協会は、仙石原が「大正から昭和にかけて欧米型の避暑地として開発された」と説明しています。広い草原と涼しい高原気候は、湯治場よりも別荘地・避暑地としての価値を持っていました。そこに大涌谷からの引湯が結びつき、今日の高原リゾートができあがっていきます。

ここで正確を期しておくと、引湯から始まった箱根の温泉地は仙石原だけではありません。強羅温泉も早雲山や大涌谷からの引湯で開かれ、自前の源泉を掘り当てたのは昭和27年(1952年)になってからです。ただし強羅の引湯開始が明治期であるのに対し、仙石原の1736年は150年以上早いことになります。仙石原は、箱根で「引湯によって成立した温泉地」のいちばん古い例といえます。

最初は4軒だった仙石原温泉

箱根温泉旅館協同組合の資料には、こう記されています。

かつて仙石原温泉とは上湯(冠峰楼)、下湯(万岳楼)、元湯(仙郷楼)、俵石(俵石閣)の四つの旅館を総称した。

出典:箱根温泉旅館協同組合「箱ペディア」仙石原温泉

つまり仙石原温泉とは、もともと大涌谷から湯を引いた4軒の宿の総称でした。今の32軒という広がりからすると、ずいぶん小さな始まりです。

そして興味深いことに、この4軒のうち「元湯・仙郷楼」と「下湯・万岳楼」は、現在も組合加盟の宿として営業しています。江戸期に4軒だけだった湯が、いまも同じ場所で続いているわけです。

昭和5年、温泉供給会社の設立で一気に広がる

4軒だった仙石原が今の姿になる転機は、昭和に入ってから訪れます。

昭和五年以降である。この年、箱根温泉供給株式会社を設立、大涌谷の造成温泉が多方面に供給されだした。

出典:箱根温泉旅館協同組合「箱ペディア」仙石原温泉

1930年(昭和5年)に温泉を供給する会社ができ、大涌谷の湯が広い範囲へ配られるようになりました。ここが決定的でした。自然の湧出地点に縛られないということは、「景色のいい場所」「広い土地」に宿を建てられるということです。避暑地としての開発と温泉供給が噛み合って、高原リゾート・仙石原ができあがっていきます。

歴史が浅いことは弱点のようにも聞こえますが、がやはむしろ逆だと思っています。美術館が集まり、宿の種類が多様で、道が広く歩きやすいという仙石原の居心地の良さは、すべてこの成り立ちに由来しているからです。

仙石原すすき草原 ── 18ヘクタールと700mの遊歩道

仙石原といえば、やはりすすき草原です。台ヶ岳の山裾に広がるススキの群落で、箱根町観光協会は「黄金のじゅうたんを約18ヘクタールにも広げる」と表現しています。東京ドームがおよそ5ヘクタールですから、その3倍以上の広さということになります。

草原の中には全長700mの遊歩道が通っていて、ススキに挟まれた道をまっすぐ歩いていけます。背丈より高いススキの間を進む体験は、写真で見るのと実際に歩くのとではかなり印象が違います。

仙石原すすき草原のススキ(2021年3月・山焼き前の枯野/がや撮影)

がやが撮影したのは2021年3月6日、山焼きの直前です。穂は色あせ、茎だけが立ち枯れています。この枯れきった草原が数週間後に焼かれ、また一から金色の草原が育つ——そう思って見ると、見頃以外の季節の草原にも味わいがあります。

見頃は9月下旬から11月上旬ごろです。ススキは秋が深まるほど穂が開き、銀色から金色へと表情を変えていきます。年によっては11月末まで楽しめることもあります。「ススキなんてどこにでもある」と思われるかもしれませんが、18ヘクタールが一斉に色づく光景はやはり別物です。

訪れる際に知っておきたいことが2つあります。

ひとつはマナーです。観光協会は「遊歩道から出たり、ススキを持って帰ったりしてはいけません」と明確に呼びかけています。近くには無料の観光駐車場と仮設トイレも用意されています。

もうひとつは、この景観が人の手で維持されているということです。仙石原では毎年春に山焼き(火入れ)が行われます。箱根町の公式案内によれば、これは「仙石原すすき草原の景勝維持の為」に実施されるもので、仙石原すすき草原山焼き実行委員会が主体となっています。実施日は天候によって延期されることもあります。放っておけば雑木林に戻ってしまう草原を、火を入れることで守り続けているわけです。この章に載せたすすき草原の写真は、ちょうどその山焼きの直前に撮ったものです。あの金色の風景は、自然そのままの姿ではなく、人が手をかけ続けた結果だということになります。

泉質のしくみ ── 白濁湯と透明湯、2系統を集中管理

仙石原の湯には、大きく2つの系統があります。箱根町観光協会の説明は次の通りです。

大涌谷(硫黄泉=白濁湯)と姥子(透明湯)の引湯を集中管理して各旅館・ホテルに供給

出典:箱根町観光協会「仙石原温泉」

泉質としてはカルシウム─硫酸塩泉(石膏泉)および単純硫黄泉(硫化水素型)が挙げられています。仙石原といえば乳白色のにごり湯のイメージが強いと思いますが、あの白濁は大涌谷から引かれた硫黄泉によるものです。

ここで知っておくと面白いのが、大涌谷の湯が「造成温泉」であるという点です。大涌谷では火山の噴気(水蒸気)に水を混ぜて温泉をつくり出しており、自然に湧いた湯をそのまま引いているわけではありません。仙石原の白濁湯は、いわば今も活動を続けている火山からの贈り物です。

その火山活動の現実も、知っておいて損はありません。大涌谷の自然研究路は2015年5月から火山活動の影響で立入禁止となり、約7年ぶりに再開されました。現在は事前予約制で1日4回・各回定員30名、監視員2名の引率という形で散策できます(箱根町公式)。湯の供給元がこうした場所であることは、仙石原の湯の性格を知るうえで大切な背景です。

この給湯のしくみは、その後も広がり続けました。箱根温泉旅館協同組合の資料によれば、昭和40〜44年にかけて姥子の冠ヶ岳寄りに掘られた温泉や蒸気泉でも温泉造成が行われ、給湯パイプは仙石高原から仙石、金時神社付近の笹尾台まで延びています。仙石原の広い範囲に宿が点在できるのは、この給湯網があるからです。

もう一方の姥子(うばこ)は、大涌谷の南側にある古湯で、こちらは鎌倉時代からの歴史を持つ「眼の温泉」として知られます。仙石原の透明な湯にはこの系統が使われています。姥子については姥子温泉ガイドで詳しく紹介しています。

現地で確かめた温泉分析書 ── pH2.1とpH9.18が同じ宿にある

ここからは、がやが実際に泊まって確かめた話です。2026年8月、仙石原の「品の木一の湯」に1泊しました。館内と客室に掲示されていた温泉分析書を読んだところ、公式サイトにも予約サイトにも書かれていない事実が分かりました。

この宿の大浴場には、まったく性格の違う2つの湯が引かれていました

浴槽 源泉 泉質 pH
露天風呂 大涌谷温泉(蒸気造成混合泉) 酸性−カルシウム−硫酸塩・塩化物泉 2.1
内風呂 大平台温泉(第3号井戸) アルカリ性単純温泉 9.18

※品の木一の湯の館内掲示(温泉分析書)をがやが実見して転記。2026年8月時点。

仙石原の宿の客室露天風呂(大平台温泉・がや撮影)

客室の露天風呂も温泉でした(大平台温泉・がや撮影)。

仙石原の宿に掲示された温泉分析書(大涌谷温泉と大平台温泉の2枚)
館内に並べて掲示されていた2枚の温泉分析書。左が大涌谷温泉(pH2.1)、右が大平台温泉(pH9.18)です(がや撮影)。

pH2.1の強酸性泉と、pH9.18のアルカリ性単純温泉。数歩の距離で、これだけ両極端な湯を行き来できる宿があるということです。肌にピリッとくる酸性泉と、とろりとしたアルカリ泉の違いは、入り比べるとはっきり分かります。

露天風呂の湯は、写真でよく見る仙石原らしい乳白色の濁り湯でした。湯口に近づくと硫黄のにおいがはっきり分かります。一方の内風呂は無色透明で、肌に触れたときのやわらかさがまるで違います。雪をかぶった金時山を眺めながら白濁湯に浸かる——冬に訪れるなら、これが仙石原のいちばん贅沢な時間だと思います。

そしてもう一点。ここで引かれている透明湯は姥子ではなく大平台の湯でした。つまり組合公式の「大涌谷+姥子」という説明は温泉地全体の枠組みであって、実際にどの源泉が引かれているかは宿ごとに違います。仙石原で「どんな湯に入れるか」を知りたいなら、宿単位で確認するのが確実です。予約サイトの泉質欄より、館内の温泉分析書のほうが情報量が多い、というのが泊まってみての実感でした。

この宿の詳しい滞在レポートは仙石原 品の木一の湯 宿泊記にまとめています。

[PR]アフィリエイト

仙石原で2つの源泉を体験する

pH2.1の白濁湯とpH9.18のアルカリ泉を一晩で入り比べられる宿です。1名から泊まれるプランもあります。

仙石原 品の木一の湯の最新空室・プランを見る

じゃらんnetで仙石原 品の木一の湯を見る

美術館めぐり ── 高原リゾートならではの文化施設

仙石原のもうひとつの顔が美術館です。温泉地にこれだけ本格的な美術館が集まっているのは全国的にも珍しく、これも別荘地・避暑地として発展した歴史の産物といえます。

施設 入館料(大人) 開館時間 特徴
ポーラ美術館 2,200円 9:00〜17:00(入館16:30まで) モネ・ルノワール・ピカソら西洋絵画から日本絵画・東洋陶磁・現代アートまで
箱根ガラスの森美術館 1,800円 10:00〜17:30(入館17:00まで) ヴェネチアン・グラス専門
箱根ラリック美術館 1,500円 9:00〜16:00(入館15:30まで) ルネ・ラリックのガラス工芸・宝飾
箱根湿生花園 700円 開園期間 3月14日〜11月30日 水湿地の植物中心・約1,700種

※2026年8月時点。出典:各施設公式サイトおよび箱根町観光協会。料金・時間は変更されることがあるため、お出かけ前に公式サイトでご確認ください。

がやが泊まった品の木一の湯からは、箱根ガラスの森美術館が徒歩圏でした。宿の目の前の道を少し歩くと看板が見えてきます。

仙石原の箱根ガラスの森美術館の案内看板

ポーラ美術館は仙石原の小塚山にあり、森のなかに埋め込まれるように建てられた建築そのものも見どころです。箱根湿生花園は冬季は休園し、開園は3月中旬から11月末まで。後述する天然記念物・仙石原湿原と地続きの環境で、湿原の植物をじっくり観察できます。

なお、かつて仙石原にあった「星の王子さまミュージアム」は2023年3月31日をもって閉館しています。1999年に開館し20年以上親しまれた施設でしたが、現在は営業していません。古い記事やガイドブックには掲載が残っていることがあるので、旅程を組む際はご注意ください。

日帰り入浴できる13施設 ── 料金と時間の一覧

仙石原は日帰り入浴を受け入れている宿が多いのも特徴です。箱根仙石原温泉旅館ホテル組合の公式サイトには13施設が掲載されています(うち2施設は要問合せ)。料金が明示されている11施設をまとめました。

施設 料金 時間・備考
万寿屋 750円 組合サイトに時間の記載なし(宿へお問い合わせください)
温泉旅館 みたけ 1,000円 12:00〜18:00
金時山荘 1,000円 11:00〜16:00・要予約
箱根ホテル花月園 1,200円 11:00〜15:00
マウントビュー箱根 1,200円 11:00〜15:00
仙石原 ススキの原 一の湯 1,400円 13:00〜20:00
仙石原 品の木 一の湯 1,400円 13:00〜20:00
箱根高原ホテル 1,500円 12:00〜16:00(最終受付15:30)タオル付き
ホテルグリーンプラザ箱根 1,600円 13:00〜18:00(水・木は15:00〜18:00)レンタルタオル付き
箱根仙石原プリンスホテル 1,700円 14:00〜18:00(最終受付17:00)
EN RESORT Re’Cove Hakone 1,700円 15:00〜20:00・タオル付き

出典:箱根仙石原温泉旅館ホテル組合 公式サイト(2026年8月時点)。ほかに萬岳楼など2施設が「要問合せ」で掲載されています。料金・時間は変更されることがあるため事前にご確認ください。

実際に立ち寄ってみて便利だと感じたのは、一の湯グループの2軒(ススキの原・品の木)が13:00〜20:00と受付時間が長いことです。チェックイン前や、帰りのバスまでの時間に立ち寄れます。

仙石原の宿の立ち寄り入浴案内看板(13〜20時・1,400円タオル付き)

ひとつ補足しておくと、仙石原には公衆浴場・共同浴場がありません。湯本や渋温泉のような「外湯めぐり」の文化はなく、日帰り入浴はあくまで宿の風呂を借りる形になります。これも引湯で成立した近代の温泉地ならではの特徴です。

宿の選び方 ── 32軒をどう絞るか

32軒という数は、箱根のなかでも多いほうです。がやなりの絞り方をお伝えします。

白濁湯に入りたいなら、宿の泉質表示を必ず確認してください。仙石原=白濁湯というイメージがありますが、前述の通り宿によって引いている源泉が違います。「大涌谷温泉」「にごり湯」「白濁」といった表記があるかどうかが目安になります。

静けさを求めるなら、草原側の宿が向いています。仙石原は国道138号沿いに宿が並ぶエリアと、少し奥に入った静かなエリアに分かれます。道路沿いは交通の便がよい反面、車の音が気になることがあります。

コスパ重視なら1泊2食で2万円台の宿も見つかります。がやが泊まった品の木一の湯は、シングルユース(1名利用)のプランで飲み放題と金目鯛の姿煮が付いていました。逆に星野リゾート 界 仙石原やTHE HIRAMATSUのように、しっかり予算をかけて非日常を味わう選択肢もあります。この価格帯の幅の広さこそ仙石原の強みです。

なお箱根全体でいつ泊まると安いかは、予約可能ホテル数カレンダーで日ごとの空き状況の目安を毎日更新しています。旅行日程を決める前に眺めてみてください。

[PR]アフィリエイト

仙石原の宿を探す

すすきの見頃(9月下旬〜11月上旬)の週末は早めに埋まります。箱根全体の空き状況の目安は予約可能ホテル数カレンダーで毎日更新しています。

仙石原周辺の宿を楽天トラベルで探す

じゃらんnetで箱根の宿を探す

アクセスと基本情報 ── バスが主役の温泉地

仙石原には鉄道の駅がありません。移動の主役はバスです。

仙石原温泉へのアクセスSTEP1 各出発地から箱根湯本駅へ東京(新宿)ロマンスカー 約1時間30分新大阪新幹線+小田原乗換 約3時間30分名古屋新幹線+小田原乗換 約2時間30分STEP2 箱根湯本駅からバスで仙石原へ箱根湯本駅箱根登山バス(桃源台線) 約25分仙石原温泉

※所要時間は目安です。がやが実際に乗車した際は、箱根湯本駅から「品の木・箱根ハイランドホテル」バス停まで運賃950円でした(2026年8月時点)。

もっとも一般的なのは箱根湯本駅から箱根登山バス(桃源台線)を使うルートです。がやが実際に乗ったときは、湯本駅の3番のりばから乗車し、「品の木・箱根ハイランドホテル」バス停まで950円でした。所要は時刻表上で約23分、案内では約25分とされています。ただし観光シーズンは道路が混雑し、がやが乗った日も定刻から5分ほど遅れていました。時間には余裕を持ったほうが安心です。

意外と知られていないのが新宿からの高速バスです。小田急ハイウェイバスが新宿から仙石原方面へ運行しており、湯本での乗り換えなしに来られます。帰りも同様で、がやが泊まった宿の最寄りバス停には新宿駅方面行きの高速バスが停車していました。荷物が多いときや、湯本駅の混雑を避けたいときには有力な選択肢です。

車の場合は、東京方面からは東名高速・厚木ICから小田原厚木道路経由、大阪方面からは東名高速・御殿場ICから国道138号で仙石原に入ります。すすき草原の近くには無料の観光駐車場があります。

また、高速バスも停まる「仙石」バス停のそばに組合の案内所(11:00〜17:00・木曜定休)があり、宿の無料案内や割引券の配布、高速バスのチケット販売を行っています。飛び込みで宿を探すときや、観光施設の割引を使いたいときに便利です。

基本情報とアクセスマップ

温泉地名 仙石原温泉(せんごくはらおんせん)
所在地 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原
標高 約650〜700m(箱根町観光協会の案内による)
泉質 カルシウム─硫酸塩泉(石膏泉)/単純硫黄泉(硫化水素型)
源泉 大涌谷(白濁の硫黄泉)・姥子(透明湯)からの引湯を集中管理して各宿へ供給
温泉利用の始まり 元文元年(1736年)大涌谷からの引湯
宿の数 箱根仙石原温泉旅館ホテル組合 加盟32軒(2026年8月時点)
日帰り入浴 組合サイト掲載13施設(750円〜1,700円程度)/共同浴場はなし
最寄駅 箱根登山鉄道 箱根湯本駅(駅から箱根登山バス 桃源台線で約25分)
組合案内所 箱根町仙石原104/0460-84-9615/11:00〜17:00・木曜定休

四季の楽しみ方

春(3〜5月):3月上旬までは色あせた枯野が広がり、山焼きのあとは黒く焼けた草原から新しい緑が芽吹きます。3月中旬には湿生花園が開園し、ミズバショウなど春の湿原植物が見られます。

夏(6〜8月):標高650〜700mの高原ですから、都心よりはっきり涼しく過ごせます。がやが訪れた8月末も、夕方には窓を開けて過ごせるほどでした。緑のススキが風に波打つ光景も、金色の秋とはまた違う美しさがあります。

秋(9〜11月)仙石原がもっとも輝く季節です。9月下旬からススキが色づき始め、10月から11月上旬が見頃のピーク。紅葉と組み合わせれば、箱根の秋を一度に味わえます。ただし週末は道路も駐車場も相当混雑します。

冬(12〜2月):湿生花園は休園し、観光客も減って静かになります。その分、雪景色のなかで白濁湯に浸かる静かな時間が過ごせます。空気が澄んで富士山がよく見えるのもこの季節です。

国の天然記念物は「ススキ」ではない ── 正確な指定内容

すすき草原について調べていると、「ススキが天然記念物に指定されている」という説明を見かけることがあります。実際、箱根町観光協会のページにもそう読める記載があります。ただ、文化庁の文化遺産オンラインで一次情報を確認すると、指定の中身は少し違います

項目 内容
名称 箱根仙石原湿原植物群落(はこねせんごくはらしつげんしょくぶつぐんらく)
区分 国指定 天然記念物(特別天然記念物ではありません)
指定年月日 1934年(昭和9年)1月22日
対象 台ヶ岳西麓に位置する湿原の植物群落

出典:文化遺産オンライン「箱根仙石原湿原植物群落」(文化庁)

指定の解説文には、ハナショウブをはじめチゴザサ・カキラン・ミズチドリ・カセンソウ・クサレダマ・モウセンゴケ・ミズゴケといった湿原植物の名が並び、「古来この地方に存在する湿原植物の今日に残れるもの」として植物分布学上の価値が評価されたことが記されています。

つまり国が守ろうとしたのは、あの金色のススキ草原そのものではなく、台ヶ岳の西麓に残された湿原の植物たちでした。神奈川県に残る貴重な湿原であり、箱根火山の火口原の名残という地形的な背景も持っています。

この違いは細かい話に見えるかもしれませんが、すすき草原と湿原は、成り立ちも守られ方も別のものです。ススキ草原は毎年の山焼きで人が維持している景観、湿原は手を加えず保護されている自然。同じ仙石原にある2つを混同しないほうが、この土地の面白さがよく見えると思います。なお湿原の一部は箱根湿生花園で観察することができます。

1泊2日のモデルコース

秋(ススキの見頃)を想定した、がやのおすすめコースです。

1日目:新宿からロマンスカーで箱根湯本へ(約1時間30分)。湯本駅3番のりばから桃源台線のバスで仙石原へ(約25分)。まずすすき草原で遊歩道を歩き、午後の光でススキが金色に光る時間を狙います。その後箱根ガラスの森美術館へ。夕方に宿へチェックインし、白濁湯とアルカリ泉を入り比べて夕食へ。

2日目:朝風呂のあと、ポーラ美術館でゆっくり過ごします。森の遊歩道も併設されているので、天気がよければ散策も。帰りは仙石原から新宿行きの高速バスに乗れば、湯本の混雑を避けて座って帰れます。

ススキの時期以外なら、初日を箱根湿生花園(3月中旬〜11月末)に置き換えるのもおすすめです。1,700種の植物をゆっくり見て回ると、それだけで1〜2時間は楽しめます。

[PR]アフィリエイト

このコースで泊まる宿を探す

1日目の夕方にチェックインできる立地の宿を選ぶと、上のコースがそのまま実行できます。バス停「仙石」「品の木」周辺が便利です。

バス停「仙石」「品の木」周辺の宿を見る

じゃらんnetで空室を確認する

よくある質問

Q. 仙石原温泉は箱根七湯に入っていますか?

入っていません。箱根七湯は湯本・塔之沢・堂ヶ島・宮ノ下・底倉・木賀・芦之湯の7つで、いずれも自然に湧いた湯です。仙石原の温泉は元文元年(1736年)に大涌谷から引湯したことで始まったため、江戸期の七湯にも温泉番付にも含まれていません。後の「箱根十七湯」には数えられています。

Q. 仙石原の湯はすべて白濁していますか?

いいえ。大涌谷から引かれた硫黄泉は乳白色ですが、姥子系の透明な湯を引いている宿もあります。がやが泊まった宿では大平台温泉の透明湯も引かれていました。白濁湯に入りたい場合は、宿ごとの泉質表示を確認してください。

Q. すすき草原の見頃はいつですか?

9月下旬から11月上旬ごろが見頃です。年によっては11月末まで楽しめます。秋が深まるほど穂が開き、銀色から金色へ変化していきます。

Q. すすき草原は国の天然記念物ですか?

国指定天然記念物になっているのは「箱根仙石原湿原植物群落」(1934年1月22日指定)で、台ヶ岳西麓の湿原の植物群落が対象です。ススキ草原そのものが指定されているわけではありません。ただし観光協会が遊歩道から出ない・持ち帰らないよう呼びかけていますので、マナーは守って楽しみましょう。

Q. 仙石原に共同浴場(外湯)はありますか?

ありません。日帰り入浴は宿の風呂を利用する形になります。組合公式サイトには13施設が掲載されており、750円〜1,700円程度です。

Q. 星の王子さまミュージアムには行けますか?

2023年3月31日をもって閉館しました。現在は営業していません。古いガイドブックや記事には掲載が残っていることがあるのでご注意ください。

Q. 仙石原に温泉街はありますか?

いわゆる温泉街(土産物店や飲食店が並ぶ通り)はありません。広い高原に宿や美術館が点在する形で、浴衣で食べ歩きをするような楽しみ方には向きません。その代わり静かで開放感があります。

Q. 電車で行けますか?

仙石原に鉄道駅はありません。箱根湯本駅から箱根登山バス(桃源台線)で約25分です。新宿からは小田急ハイウェイバスで乗り換えなしに来ることもできます。

Q. 大涌谷は見学できますか?

大涌谷自然研究路は2015年5月から火山活動の影響で立入禁止となり、約7年ぶりに再開されました。現在は事前予約制で1日4回・各回定員30名、監視員2名の引率という形で散策できます。最新の状況は箱根町や気象庁の情報をご確認ください。

まとめ ── 「新しい温泉地」だからこその面白さ

仙石原温泉は、箱根の湯治場としては後発の温泉地です。江戸の番付に名はなく、七湯にも数えられず、足元から湧く湯もありません。

けれども、だからこそこの土地には他の箱根にはないものがあります。広い草原と開けた空、本格的な美術館、価格帯も雰囲気も多様な32軒の宿。湯治場として狭い谷筋に育った温泉地では、こうはなりませんでした。「引いてきた湯」で始まったからこそ、湯の制約から自由な場所として発展できたのだと思います。

秋の金色の草原は確かに圧巻です。ただ、それが毎年の山焼きで守られている景観だと知ると、見え方が少し変わります。すぐ隣には手つかずで守られてきた湿原があり、湯の供給元である大涌谷は今も活動を続けている ── そういう重なりを知ったうえで湯に浸かると、仙石原はぐっと面白い場所になります。

箱根のほかの温泉地については箱根十七湯ガイドで、がやが実際に泊まった仙石原の宿については品の木一の湯 宿泊記で詳しく紹介しています。

[PR]アフィリエイト

仙石原に泊まる

組合加盟32軒。白濁の硫黄泉、静かな高原の宿、美術館の徒歩圏まで選択肢はさまざまです。すすきの見頃(9月下旬〜11月上旬)の週末は早めの確保がおすすめです。

すすきの季節の空室を楽天トラベルで確認

じゃらんnetで仙石原の宿を見る

関連記事

参考・出典

  • 箱根町観光協会「仙石原温泉」「仙石原エリア」「仙石原すすき草原豆知識」「ポーラ美術館」
  • 箱根仙石原温泉旅館ホテル組合 公式サイト(宿の一覧・日帰り温泉・交通案内)
  • 文化庁 文化遺産オンライン「箱根仙石原湿原植物群落」
  • 箱根町「仙石原すすき草原 山焼き」「大涌谷自然研究路再開」
  • 箱根ガラスの森美術館・箱根ラリック美術館・箱根湿生花園・ポーラ美術館 各公式サイト
  • がやによる現地取材(2026年8月29〜30日・仙石原 品の木一の湯に宿泊、館内掲示の温泉分析書を実見)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA